フォート・コーチへ向かう
歴史が豊かで芸術的な活気にあふれるフォート・コーチは、アラビア海に面し、ケララ州のバックウォーターに囲まれています。夫と私がそこにあるホテルへ向かったとき、到着するのに時間がどれほど長くかかるか、まったく見当もつきませんでした。 私はまだトリチュールでの体験で気分が高まっていて、実際に次の目的地へどうやって向かうかという実用的な問題にはほとんど注意を払っていなかったのです。
タクシーの運転手は若く、経験が浅くて、おそらく別の州から来た人だったのでしょう。渋滞に巻き込まれると、彼はフォート・コーチに行くにはフェリーに乗らなければならないと言うのです。そのフェリーは一度に10台ほどの車しか乗せられないのに、私たちの前にすでに30台以上の車が並んでいました。 さらに悪いことに、その日はフェリーの1隻が運休していて、運行中のフェリーは1隻だけでした。私たちの車が乗船できるようになるまで、少なくとも1時間半は待たなければならないことがわかりました。
さらに苛立たしいことに、時折現れる政府の旗をボンネットに掲げた車が、こっそりと列の先頭に割り込んでくるのです。これは、特権階級は不便を感じないのが当然というインドの奇妙なVIP文化を改めて思い知らされる出来事でした。また、単にそのような地位があるふりをして政府の旗をつけた車に乗る人もいるそうです。 更におかしなことに、私たちが待っていた場所から目的地がはっきりと見える距離にあることでした。わずか数キロメートルしか離れていないのに、バックウォーターが行く手を遮っていて両岸を結ぶ橋がないため、もどかしいほど長い時間待たなければならなかったのでした。
ホテルとその周辺
ようやく到着した頃には、その古い港町の旧邸宅ホテルがまるで奇跡のように感じられました。そこは1800年代初頭に、ヨーロッパ人船員や茶商の住居として建てられ、後に茶園の所有者が住んでいた植民地時代の邸宅でした。 オランダ風のアーチとポルトガル風の中庭のデザインが融合したこの築300年の邸宅は、今やフォート・コーチで最も人気のある歴史的宿泊施設の一つとなっていました。高い天井、磨き上げられた木製の床、広々としたロビー、温かく迎えてくれるスタッフ、そして太り気味だけど元気な犬や猫たちが、この場を一瞬にして魅力的な空間に変えてくれました。 床に伸びて寝転がっていた犬の一匹が突然立ち上がり、体の重さにもかかわらず、私たちに挨拶しようと足を引きずって近づいてきました。その懸命な姿と親しみやすさに、私たちは心を打たれました。
きしむ木製の階段を登ると、2階にある広々としたスイートルームに案内されました。そこには、大きなベッドルーム、庭を見渡せる格子窓、木製のブランコが置かれた小さな子供部屋、そしてスタイリッシュなバスルームがありました。 アンティークの木製家具が空間に独特の雰囲気を醸し出していて、そこに滞在していると、まるで生きた博物館に足を踏み入れたかのようでした。そこでは、植民地時代の息吹を感じさせるほど、時間がゆっくりと流れていました。また、階下には緑豊かな庭園とプールを見渡せる素敵なレストランもありました。疲れ果てた長旅の末に、ようやく一息つける場所でした。





私たちが到着した時に雨は止んでいたものの、夕方の空気にはまだ雨の湿り気が残っていました。ホテルの前には、モンスーンの季節に鮮やかな緑の葉を茂らせた、数本の巨大な古木が立っていました。涼しい空気に誘われて、私たちは散歩に出かけ、小さな店や色鮮やかな壁画が立ち並ぶ狭い路地をぶらぶらと歩きました。 フォート・コーチは、その年の3月まで数ヶ月にわたり開催されていた現代アートフェスティバル「コーチ・ムジリス・ビエンナーレ」で知られています。 タワー・ロード付近の壁画には、まさにその創造的な精神が宿っているかのようでした。まるでフォート・コーチの芸術が、ギャラリーという枠に閉じ込められることを拒み、街の通りや壁へと溢れ出ているように感じました。
私たちは「カシ」というアートギャラリー兼カフェに入りました。入り口には、美しい水彩画の展示が所狭しと並んでいました。展示されていた絵画や彫刻はとても洗練されていて、まさに熟練した芸術家たちの作品であることは一目瞭然でした。 素朴な中庭の周りでは、若いカップルや友人同士のグループが、食事を楽しみながら会話を交わしてのんびりと過ごしているのが見えました。驚いたことに、ほぼすべてのテーブルで、みんな同じ大きなチョコレートケーキを分けて食べていたのです。私たちはすでにボリュームたっぷりの食事を注文していたけれど、これほど多くの人が食べているのだから間違はないと思い、私たちもそのケーキを注文してみました。食べてみるとケーキは絶品で、ラザニアも同様においしく印象に残る味でした。芸術作品、店内の会話の穏やかなざわめき、おいしい食事、そしてモンスーンの新鮮な夕方の空気、これらすべてが相まって、この小さなお店の中でゆっくりと最高の時を過ごしたのでした。






夕食後、私たちはヴァスコ・ダ・ガマ広場を散策しました。そこには、屋台料理や新鮮な魚、衣類、お土産を売る露店が並び、活気に満ちていました。広場は賑わっていましたが、すでに暗くなっていたため、有名な中国式漁網を見ることはできませんでした。いつかまた来る時のお楽しみにしようと思います。
すべての生きとし生けるものが幸福でありますように

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